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『治りませんように』斉藤道雄 みすず書房 [本]

北海道の南、浦河にある「べてるの家」。精神障害やアルコール依存などを抱える人々が共同住居と作業所を営んでいる。著者の斉藤さんはテレビ報道局の記者、ディレクター。10年かけて「べてる」の人たちを取材してきた集大成が本書である。「私にはそれだけの年月が必要だった」と言う。

タイトルからして衝撃的である。そして、斉藤さんが10年かけて手探りで書かれた本は、もっとじっくりと丁寧に読まなければいけないだろう。今日、読み終えたのだけど、少し時間をおいてもう一度読みたい、いや読まなければ、と思う。

線を引いた箇所はたくさんある。なかでも精神科ソーシャルワーカーの向谷地生良さんの「苦労の哲学」が特に心に響いた。

なぜ苦労するのか、なんのために苦労するのか、という苦労の哲学。自分の苦労は地球の裏側にある苦労とリンクしているという捉え方や、苦労への親和性とでもいうものが「人とつながる」ことに向かっていく。

向谷地さんは「しあわせにならない」とも自分自身に言い聞かせている。
それはけっして不幸になることを勧めているわけではない。しあわせそのものを否定しているわけでもない。
「しあわせになるという生き方が陥りがちな、閉じてゆく方向性、他者への関心の喪失、それがもたらす人間存在の陰影のなさを突いている」(243ページ)。

深い。
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